月にすむ うさぎ
むかし、ずっとずっとむかし、深い森の中に、うさぎときつねとさるが、なかよく暮らしていました。
三匹はいつもいっしょにのんびりと歩きまわり、うれしいことがあると、おたがいに分けあっていました。
ある寒い夕方のことです。森の道に、つかれきったおじいさんがひとり、すわりこんでいました。「ああ、おなかがすいてたまらない。なにか食べるものを分けてくれないかね。」
心のやさしい三匹は、すぐに散らばって、おじいさんに差しあげるものをさがしに出かけました。
さるは木にひらりと登って、よく熟れた木の実をいっぱいに摘んできました。きつねは小川へ走っていって、きらきら光る魚をくわえてきました。
ところがうさぎは、いくら野原をかけまわっても、おじいさんに差しあげられるものが見つかりませんでした。うさぎには、なにも持っているものがなかったのです。
うさぎはしょんぼりして帰ってきましたが、手ぶらのままではいられませんでした。小さな胸が、どきどきと高鳴っていました。
うさぎはじっと考えてから、おじいさんのそばへ近づいて言いました。「おじいさん、わたしには差しあげるものがありません。でも……わたしの心だけは、ぜんぶ差しあげたいのです。」
そうして、おじいさんのために枯れた草や小枝を集めて、小さな足でぴょんぴょんとはねながら、心をこめてあたたかい寝床をこしらえてあげました。
うさぎの小さな心があまりにもうつくしくて、寒い森じゅうが、ぱっと明るくなったようでした。
じつはそのおじいさんは、空からおりてきた方だったのです。三匹のやさしい心を、そっと見守っていたのでした。
おじいさんはにっこりほほえんで、うさぎを両手でそっと抱きあげました。「おまえの心は、ほんとうにうつくしいね。このあたたかさが、世界じゅうを照らしてくれたらいいのに。」
そうして、うさぎをまんまるいお月さまの上に、そっとのせてあげました。
だからでしょうか。夜空にお月さまが明るくのぼると、その中に一匹のうさぎが住んでいるように見えるのです。持っているものを惜しみなく分けあげた、心のやさしい、小さな月のうさぎが。
うさぎは持っているものがいちばん少なかったけれど、心だけはいちばん豊かだったんだよ。自分にあるほんの小さなものまで、よろこんで差しあげようとしたんだね。
空がうさぎを月にのせたのは、そのやさしい心が、夜ごとに世界じゅうを照らす光になってほしかったからなんだろうね。あたたかい心は、そうやって遠くまで明るく届くものなんだよ。
わたしたちのあかちゃんも、月を見たら思い出してね。いちばん小さな手でも、分けあう心をのせれば、夜じゅうを明るくできるほど輝くということを。パパは、あなたの心がいつもそんなふうにあたたかくあってほしいと願っているよ。