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東洋の昔話 · 日本の昔話『鶴の恩返し(つるのおんがえし)』

鶴の恩返し

東洋の昔話 · 読み聞かせの寝かしつけ物語 · 約4分

むかしむかし、雪がしんしんと降るある国に、心のやさしい若者が住んでいました。持っているものは少なかったけれど、小さな命もたいせつにする人でした。その日も若者は、市場からの帰り道を歩いていたのです。

雪におおわれた野原を通っていた若者は、ふと足を止めました。まっ白な一羽の鶴が、わなにかかって、ばたばたともがいていたのです。鶴の目には、おびえがいっぱいにあふれていました。

若者はそっと近づいて、用心しながら、ゆっくりとわなをほどいてあげました。「さあ、もう大丈夫だよ。お行き。」鶴は翼を大きく広げて、空高くふわりと舞い上がりました。ぐるりと一回りすると、ありがとうと言うように、こっくりと首をかしげたのです。

その夜、ふぶきが吹きあれました。だれかが、若者の小さな家の戸を、とんとんと叩きました。戸を開けると、白い着物を着たうつくしい女の人が、寒さにふるえながら立っていたのです。

「道に迷ってしまいました。一晩だけ、泊めていただけませんか。」女の人がたずねました。若者はよろこんで部屋をゆずり、あたたかいお粥を炊いてあげました。女の人は、そのやさしさに、心がほっとあたたかくなったのです。

女の人は何日かとどまって、家のしごとを手伝ってくれました。その手先のなんと器用なこと、小さな家はいつもぽかぽかと、きれいに片づいていました。いつのまにか、ふたりはおたがいを深くいとおしむようになっていたのです。

冬が深まって、暮らしが苦しくなると、女の人が言いました。「わたしがきれいな布を織ってさしあげましょう。それを市場で売ってください。」ただひとつ、布を織っているあいだは、けっして部屋の戸を開けないでくださいと、そっとお願いしたのです。

女の人は部屋にこもって、何日も夜も昼も、機(はた)の前にすわりつづけました。やがて織りあがった布は、お日さまのようにうつくしく、雪のようにまっ白でした。市場に出して売ると、人々は先を争って買っていったのです。

おかげで暮らしは、だんだんゆとりがでてきました。けれど布を織るたびに、女の人はだんだんと、やせていくのでした。若者は心配になって、つい、そうっと戸のすきまから、中をのぞいてしまったのです。

部屋の中には、女の人ではなく、一羽の白い鶴がいました。鶴は自分の羽根を、一枚また一枚と抜いては、あの美しい布を織っていたのです。そのときやっと、若者はすべてを知りました。

この鶴は、いつかわなから逃がしてあげた、まさにあの鶴だったのです。もらったやさしさを返そうと、人の姿になって、たずねてきてくれていたのでした。若者の目に、あたたかいものがこみあげてきました。

鶴はそっと頭をあげて、若者を見つめました。「わたしの心を、分かってくださったのですね。もう、わたしは空へ帰らなくてはなりません。」その声には、うらみではなく、ただ深い感謝だけがこもっていました。

鶴は、さいごに、いちばんうつくしい布を一反、のこしていきました。そうして窓を大きく開けると、まっ白な翼を広げて、空へと舞い上がったのです。ぐるりと一回りしながら、もう一度、こっくりと首をかしげました。

若者は、そのうつくしい布を、いつまでもいつまでも、たいせつにしまっておきました。鶴は遠くへ去ってしまったけれど、おたがいに分け合ったあたたかい心だけは、いつもそばにのこっていたのです。雪の降る夜には、若者は空を見あげて、にっこりとほほえむのでした。

パパのひとこと ✶

このお話では、鶴と若者が、もらったやさしさをそっと返し合ったんだ。若者は小さな一羽の鳥を見て見ぬふりをしなかったし、鶴はその気持ちを、羽根の一枚一枚に込めて返したんだよ。

わたしたちのあかちゃんも、生きていく中で、だれかからやさしさをもらうことがあるよ。そのあたたかさを心にそっとしまっておいて、また別のだれかに静かに手渡せる人になってほしいな。そうして行き来するやさしさが、寒い冬の夜さえ、ほっとあたためてくれるんだ。

鶴が空へ帰っていったのは、悲しいことじゃないんだよ。おたがいの心を分かり合えたのだから、それはとてもありがたい、やさしいお別れだったんだ。パパはね、あかちゃんが、もらった愛をまた分けてあげられる、あたたかい人に育ってほしいと願っているよ。

あたたかい夜をすごしてね、あかちゃん。🌙